風俗店員で後悔したこと
2026/9/4 12:04
「風俗店で働いてます」と聞いたとき、たぶん最初に出てくる感想って、
「給料よさそう」より先に「大丈夫なの?」だと思います。
僕もこの業界に入る前はそんな感じでした。
何が大丈夫じゃないのかは自分でもよく分かってないんですけど、とにかく漠然と大丈夫じゃなさそうなんですよね。
求人を見ていても、給料は普通の仕事より高めに書いてある。
でも、その金額の横に見えない文字で「※その代わり○○を失います」って書いてあるような気がする。もちろん実際には書いてません。
「風俗店員になって後悔してますか?」と聞かれたら、僕の場合は今のところ、なったこと自体を後悔したことはあまりないです。
ただし、「毎日最高です。人生が変わりました」みたいな話でもありません。
普通に仕事なので、朝というか出勤前に「今日休みにならないかな」と思う日もありますし、忙しい日は帰ったあと何もしたくなくなります。
スーパーで晩ご飯を選ぶ気力すらなくなって、なぜか温めたお弁当をレンジに残したまま帰ってしまった日もあります。疲れている人間の判断力なんてそんなもんです。
この仕事に対して後悔があるとしたら、仕事そのものより「もっと早く働いておけばよかったな」という部分のほうが近いかもしれません。
風俗店の男性スタッフというと、たぶん外から見るとかなり特殊な仕事に見えます。
実際、扱っているサービス自体は普通の飲食店や会社とは違いますし、働いているキャストもいます。
電話ではちょっと人に聞かれたくない単語も普通に飛び交います。
入ったばかりの頃は、横で先輩が何のためらいもなくそういう会話をしているのを聞いて、「この人、昼間のファミレスでもこの声量でいけるのかな」と思ったことがあります。
たぶんいけます、わたしたちは風俗店員という仕事に誇りを持っています。
でも、仕事として一日を見てみると、意外と地味です。
電話を取って、予約を確認して、パソコンを触って、女性の出勤状況を確認して、お客様から問い合わせがあれば答える。忙しくなればみんなでバタバタして、暇になれば「今日ちょっと落ち着いてますね」なんて話をする。
もちろん店によって仕事内容は違いますが、少なくとも僕が入る前に想像していた、「毎日すごい事件が起きて、謎の怖い人が奥から出てきて、何かあったら地下に連れていかれる」みたいな世界ではありませんでした。
そもそも地下なんてないしね。
考えてみれば当たり前で、お店として毎日営業するには、予約を間違えないとか、電話にちゃんと出るとか、出勤している人を把握するとか、そういう普通のことを普通にやらないと回らないんですよね。
入る前は風俗という部分ばかり見えていましたが、入ってみると「サービス業の裏方」という感じのほうが近かったです。
これも普通にあります。
電話が何本も重なると焦りますし、自分のミスで周りに迷惑をかければ落ち込みます。女性から相談を受けることもあれば、お客様からかなり細かい質問をされることもあります。
人と人の間に入る仕事なので、「全員が自分の思った通りに動いてくれたら楽なのにな」と思う瞬間もあります。
でも、それを言い始めると、たぶん会社員も居酒屋も美容師も配送業も全部そうです。仕事というものは基本的に、自分以外の人間が登場した瞬間から少し面倒になります。
そういう意味では、風俗店だから特別に嫌なことばかり起こる、という感じでもありません。
むしろ最初の頃に一番大変だったのは、業界用語を覚えることでした。
先輩同士が普通に話しているのを聞いても、「日本語なのに半分くらい分からない」という状態になります。でも、これも数週間するとだんだん分かってきます。学生時代に急にクラスで流行ったゲームの話についていけなかったときと似ています。知らない側だけちょっと空しいやつです。
仕事を覚えるまでは当然ミスもします。
電話で聞くことを忘れたり、入力する場所を間違えたり、「さっき教えてもらったのにもう忘れた」ということもあります。
これは結構へこみます。
ただ、不思議なもので、最初は10分かかっていたことが普通にできるようになって、電話が鳴っても特に緊張しなくなって、後から入ってきた人に説明できるようになると、「あれ、俺ちゃんと仕事できるようになってるな」と思う瞬間があります。
いつであってもなんであってもこの成長してる感覚は好きです。
ここを綺麗な話だけで終わらせても仕方ないので、お金の話もします。
僕は仕事を選ぶとき、「やりがいが一番大事です」と言えるタイプではありません。
やりがいだけで家賃は払えませんし、
コンビニで「今日かなり成長したので唐揚げください」と言っても
唐揚げはもらえません。
なので、給料が高めなのは普通にありがたいです。
同年代の友達と話していると、給料が上がらないとか、残業しても生活があまり楽にならないという話を聞くことがあります。もちろん会社によりますし、風俗店でも待遇は店によって全然違いますが、「働いた分、ちゃんと生活を良くしていきたい」という人にとって、この業界を選択肢に入れるのはそんなに変なことではないと思います。
別に高級車を買うとか、毎晩寿司を食べるとか、そんな話ではありません。
給料日に口座を見て少し安心できるとか、欲しかった服を値札を見て戻さなくて済むとか、友達に飲みに誘われたときに「金ないから無理」が毎回の返事にならないとか、そういうところです。
こういう地味な余裕って、実際かなり大きいんですよね。
僕は働く前、「風俗店で働く」ということを必要以上に大きな決断として考えていました。でもいまは、仕事選びのひとつとして真っ先に選択肢へ入るなと思っています。
これもよく考えることです。
正直、10年後も20年後も絶対この仕事をしているかと言われれば、分かりません。
でも、それって普通の会社でも同じじゃないでしょうか。
20代で入った会社に60歳までいるつもりの人ばかりでもないですし、転職する人もいます。途中でやりたいことが見つかる人もいれば、「思ってた仕事と違った」と辞める人もいます。
風俗店だけ、入った瞬間に人生の最終職業を決めたみたいに考える必要もないと思います。
働いてみて合わなければ辞めればいいし、向いているなら続ければいい。仕事を覚えて役職を目指す人もいますし、お金を貯めて別のことを始める人もいます。
僕自身も、最初から「この業界に人生を捧げるぞ」と思って入ったわけではありません。
逆にそんな少年漫画みたいな入り方をしているスタッフさんいらっしゃれば、お話をしてみたい。
「今より稼ぎたいな」とか、「今の仕事を辞めたいな」とか、「なんか求人見てたら出てきたな」とか、そのくらいの人ばかり。
そこから働いてみて、案外続いている。たぶん仕事って、そのくらいでいいんだと思います。
最初の質問に戻ると、僕は風俗店員になったこと自体は後悔していません。
もちろん嫌な日もありますし、仕事なので面倒なこともあります。それでも、入る前に想像していた怖い世界ではなかったし、普通に覚えられる仕事だったし、以前より生活に余裕もできました。
何より、「風俗店員」という名前だけで勝手に作っていたイメージと、実際の仕事にはかなり差がありました。
たぶん求人を見ている人の中にも、「ちょっと興味はあるけど、さすがに風俗はなあ」とブラウザを閉じて、数日後また同じ求人を見ている人がいると思います。
分かります。
一回閉じてスマホを置く。
そしてまた見る。
また見つけてくれましたね?
これは運命です。
無理にこの仕事をおすすめするつもりはありませんし、誰にでも向いている仕事だとも思いません。ただ、もし「なんとなく怖そう、危なそう」という理由だけで候補から外しているなら、そこまで怖がらなくてもいいとは思います。
僕も最初はそうだったので。
働いてみると、電話を取って、パソコンを触って、忙しい日はバタバタして、休憩になったら今日何食べるか考えて、仕事が終わったら帰る。
その繰り返しです。
職業欄に書く名前はちょっと珍しいですが、働いている本人の日常は思っているより普通です。
そして今のところ僕は、その普通な毎日を結構気に入っています。
少なくとも、「あのとき求人を見なければよかった」と思ったことはありません。
逆にたまに、「あのときまたスマホを閉じてたら、今なにしてたんだろうな」とは思います。
まあ、そのときはそのときで別の仕事をしていて、たぶん同じように「今日休みにならないかなぁ」と思っていた気もします。