
――夏の夜は、不思議と心をゆるめる。
普段はバタバタと動き回るスタッフたちも
この日ばかりは少し肩の力が抜けていたようだった。
線香花火を囲んで、誰が一番長く持たせられるか…
そんな他愛もない遊びに、いつもは生意気なあの子が必死になっている。
勝ち負けなんてどうでもいい。
ただ、笑い声がそこにあることが嬉しかった。
打ち上げ花火が空に咲いたとき、誰かがふいに口にした。
「こういう時間があるから、頑張れるんですよね」って。
…まったく、泣かせるじゃないか。
この仕事、なかなかどうして、悪くない。
ふと見上げた夜空には、はかなくも美しい光の残像。
夏の思い出ってやつは、こんなふうに
ふとした瞬間に心に刻まれるのかもしれない。
スタッフの笑顔。
線香花火の小さな光。
浴衣の裾を踏んでコケた新人のド派手な転倒――
……最後のは笑いすぎて腹筋痛くなったけどな。
人生ってのは、意外とこういう時間でできてる。
真面目に、でもちょっと笑いながら。
そんなチームと、またひとつ思い出が増えた夜だった。