【3週目】新人キリトが“キャストの右腕(仮)”になるまで
2025/5/30 17:00
ある日、遠藤先輩がふと声をかけてきた。
「キリトさん、今日のこの時間、ドライバーの配車やってみようか」
正直、驚いた。
まだ都内の地図もおおまかなホテルの場所も完全には頭に入ってない。
でも、任されたのが嬉しかった。
配車とは──
キャストとお客様の予約時間を見ながら、誰をどこに、どの順番で送迎するかを組み立てる仕事。
「まるでパズルみたい」と誰かが言ってたけど、本当にその通りだった。
最初に組んだ配車スケジュールは、数十分後にあっけなく崩れた。
道路の混雑、女の子の準備時間、急な予約の変更──
「机上の理屈」だけでは回らない現実が、そこにはあった。
それでも、先輩たちはバタつかず、ひとつひとつを修正していく。
「これが、“現場を回す”ってことなんだな…」
心の中で、静かに感動していた。
初めての配車が終わって、軽く反省会。
「ミスもあったけど、よく見てたね。判断も早くなってきた」
遠藤先輩のその言葉が、じんわり染みた。
裏方の仕事って、表には出ない。
でも、その積み重ねで“お店がちゃんと動いてる”ってことを、初めて実感できた日だった。
ちょっと大げさかもしれないけど──
「陰で支えること」が、こんなに誇らしいなんて思わなかった。