久しぶりにフィルムカメラを手に取った日のことを、
今でも少しだけ覚えている。
スマホより重いはずなのに、
構えた瞬間に気持ちがふっと軽くなるのが不思議だった。
シャッターを切るまでの時間が長い分、
光の向きや影の形を丁寧に見るようになる。
ただ一枚撮るだけなのに、
景色との距離の取り方がいつもと違っていた。
撮った直後に確認できないのも悪くない。
現像を待つ数日のあいだ、
小さな期待がじわっと続く。
戻ってきた写真はどれも少し曖昧で、
でもその曖昧さがやさしく感じられた。
スマホの鮮明さとは違う、
ざらっとした質感や淡い色のにじみ方に触れてみると、
思い出の温度ごと写っているような気がした。
フィルムを使ってみて分かったのは、
写真を撮る行為が“記録”じゃなく“体験”に近づくこと。
同じ街を歩いているだけなのに、
少しだけ世界がゆっくり見えた。
また気が向いたら一本だけフィルムを入れて、
あの静かな時間を味わいたい。
それでは、また!