交差点には赤と青の光が交錯し、
警官たちがテキパキと動いていた。
現場は張りつめた空気──そう、ほとんどは。
…ただ、ひとりを除いて。
「ん?」
目をこすって二度見した。
三度見した。いや、もう五度目。
あのヘルメット、ツバが…後ろ!?
いやいや、気のせいだ。
でも光が当たるたび、ツバがしっかり後頭部をガードしてる。
本人はまっすぐ立ち、腕を組み、
どこから見ても“現場のプロ”。
──ただし頭だけ、ガンダムの反対パーツ感。
まわりの警官たちは、完全スルー。
えっ、誰か気づいて!?
私だけがこの現実と戦ってるの!?
事故現場より深刻なの、君のヘルメットの方向だから!
もしかして流行ってる?
長野限定のトレンド?
それとも、前後逆に被ることで
空気の流れを最適化してるのか?(してない)
結局その夜、事故は円滑に処理され、
警官たちはパトカーに戻っていった。
逆ヘルくんは、最後に一礼して去っていく。
そのツバは、夜風をしっかり後ろで切っていた。
──ありがとう。
あなたの存在が、
長野の夜に一筋の笑いを届けてくれた。
次会うときは、どうかツバ、前で。