昼休みの終わり際、ガツンと肉の匂いに誘われて。
分厚い赤身、ジュウッと鉄板で歌う音。
その迫力に、彼は心を奪われた。
口に運ぶたび、力がみなぎる。
脂の旨味と、ほのかな焦げの苦み。
「これだよ、これが欲しかったんだ」
おにくちゃんの目は、肉の向こうに何かを見つけていた。
でも、彼の満足はそこで終わらない。
帰り道、笑顔を浮かべて職場へ向かう。
ステーキの香りを両手に抱えて。
あの分厚い肉を、みんなで分け合おう。
「ほら、食えよ。元気出るから」
肉の旨味に、会話も弾む。
その日、オフィスに笑顔が満ちた。
おにくちゃんの気前の良さと、
いきなりステーキの魔法に包まれて。
胃袋も心も、ほっこり満たされた午後だった。