人間ドックでよく使われる「胃カメラ」(正式には上部消化管内視鏡)は、人間の体の中をのぞく医療行為としては歴史が古く、紀元前4世紀の古代ギリシャにまでさかのぼります。当時は馬が交通手段で、痔に悩む人が多かったため、肛門の内部を観察する器具が用いられたのが始まりでした。そのため、広義ではこれが「内視鏡のルーツ」とされています。
一方で、いわゆる「胃カメラ」の直接のルーツは1868年、ドイツ・フライブルク大学のアドルフ・クスマウル教授が「胃鏡」を使って生きた人間の胃の中を初めて観察したこと。しかもその最初の被験者は患者ではなく、「剣を呑む芸」をする大道芸人だったそうです。
現代の「胃カメラ」が誕生するまでには、痔の検査から始まり、大道芸人の協力を得て胃の中を観察する実験へとつながってきました。
私たちの仕事も同じで、最初から完璧な形でスタートすることは稀です。小さな工夫や意外なアイデア、時には「実験的な挑戦」があってこそ、新しいサービスや仕組みが生まれるのだと思います。