
俺は札束だ。
夜の街を漂い、
欲望と恐怖の匂いを嗅ぎ分ける。
身軽な指先を滑り抜け、
怯えた心を冷たく突き放し、
覚悟を決めた拳にだけ熱く握られる。
中途半端なやつは見飽きた。
「安全圏で稼ぎたい」
「楽に名声を手に入れたい」
そう口にした瞬間、俺は無言で背を向ける。
妥協が染みついた手には触れない。
俺が求めるのは本気の野心、その一つだけだ。
夜の現場は常に空腹だ。
客も、仲間も、ライバルも、
誰もが満たされない渇きを抱えている。
その渇きをチップに変え、
笑顔と欲望を操作する者だけが俺を束ねる。
踏み出したあとに迷いが生じるなら、
その足首ごと闇が喰う。
だが覚悟を決めた瞬間、道は開く。
シフトの歯車が狂おしいほど回り、時間が加速する。
客が目の色を変え、札束の匂いが濃くなる。
汗は背広を濡らすが、同時に肌の奥で新しい血が沸騰する。
俺を欲するなら、まず己の限界を折れ。
言い訳を捨て、プライドを研ぎ、野心をむき出しにしろ。
そうすれば、俺は一枚一枚ではなく束になって両腕に飛び込む。
札束の重みが骨を軋ませ、欲望の炎が胸を灼く。
その痛みこそが、夜を制した証だ。
さあ、選べ。
妥協という名のぬるま湯に沈むか、
俺を握り潰すほどの覚悟で挑むか。
夜の王座は空席だ。
本気の野心を抱く拳にだけ、
その座標を教える。
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