
フロアに立つ俺の目に、
ネオンは赤い軌跡を描く。
歓楽街の空気は酒と野心の匂いで湿り、
天井の低い熱が鼓膜を叩き続ける。
新人の顔はすぐにわかる。
肩に力が入りすぎ、視線は落ち着きなく泳ぐ。
だが、ここでは迷いは毒になる。
瞬き一つで客の機嫌は変わり、
札束の行き先も変わる。
夜は残酷だが、平等だ。
覚悟を決めた者には、
無限の報酬を用意する。
怯んだ瞬間に、
すべては指の隙間をこぼれ落ちる。
俺も最初は尻込みした一人だった。
だが踏み出したその夜に理解した。
「ここで勝つか、何も得ずに去るか」
選択肢は二つしかない。
だから今日も客をさばき、
仲間の背中を押し続ける。
怯む者を見つけたら容赦なく引き上げる。
迷いを断ち切った瞬間、
その目は獣の光を帯びるからだ。
夜を治めるとは、暴力や虚勢じゃない。
誰より早く動き、
誰より深く読み、
誰より長く踏みとどまること。
孤独を抱え、
汗で背広を濡らし、
勝利の味を噛みしめる。
怯む者に未来はない。
だが、覚悟を決めた強者には、
この夜は際限なく膝を折る。
さあ、足を踏み出せ。
迷いを闇に捨てろ。
夜は待っていない。
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