
かつて俺も、
25万円のスタートラインに立った新兵だった。
夜の喧騒に飲まれ、
終わりのないシフトに息を詰まらせ、
逃げ道を探した瞬間もあった。
だが――逃げなかった。
この現場は、
青天井の報酬を餌にした残酷な格闘技だ。
妥協した瞬間、
札束は他人の手に転がり、
キャリアの階段は崩れ落ちる。
逆に、限界を一段踏み越えるたび、
数字は跳ね上がり、肩書きも膨れ上がる。
深夜二時、
血の気の引いた顔で帰っていく奴らを何度も見た。
誇りを守れず背を向ける者に、未来は残らない。
だが、狂ったように喰らいつく奴は、
半年で役職を引き寄せる。
「シフト制の檻?」――違う。
シフトは、24時間を武器に変える歯車だ。
回し続けるやつだけが、
誰よりも早くステージを駆け上がる。
そして気づく。
札束より重い報酬がある。
「俺には無理だ」
と呟いた昨日の自分を粉砕した、
その瞬間の誇りだ。
金は減る。肩書きも変わる。
だが、限界を超えた記憶は腐らない。
今、ラインに並ぶ新顔たちへ。
心臓が軋むほど恐れてもかまわない。
大切なのは、怖さの奥で燃える野心を黙らせないこと。
踏み出せ。
ここは、己の限界を超えた瞬間から始まる世界だ。
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